隣人への心配り
説明: 健全な隣人関係における重要性についての預言者の助言。
- より アーイシャ・ステイシー
- 掲載日時 23 Dec 2013
- 編集日時 23 Dec 2013
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預言者ムハンマド(彼に神の称賛が降り注ぎますよう)は、すべてのムスリムによってこよなく愛されている人物です。彼はムスリム以外からも、数えきれない程の称賛と敬意を受けており、宗教的にも世俗的にもその影響力の大きさが認められています。マハトマ・ガンジーは彼のことを、誓約に忠実で、友人や追従者たちへ熱烈な献身をし、勇敢で怖いもの知らずで、その使命において神への絶対的な信頼を寄せた人物であると説明しています。世界中のムスリムたちは彼を、神への崇拝、また他者との振る舞いの模範的存在として捉えています。
預言者ムハンマドによって説かれたイスラームという宗教は、私たちが隣人を大切にし、思いやりを持つよう促します。隣人とは、彼らの宗教・人種・肌の色に関わらず、良い関係が築かれるべきなのです。預言者の妻アーイシャ1の伝えた伝承によると、天使ガブリエルは預言者ムハンマドが隣人との良き関係の重要性を理解するよう強調したことが分かります。預言者ムハンマドは、天使ガブリエルが隣人との良き関係を強調するあまり、彼らに相続権をも与えるのではないかと思った程でした。
預言者ムハンマドの使命とはただ単に、クルアーンで述べられているように、隣人との良き関係を明確に命じる神のメッセージを伝達することでした。
“アッラーに仕えなさい。何ものをもかれに併置してはならない。父母に懇切を尽くし、また近親や孤児、貧者や血縁のある隣人、血縁のない隣人、道づれの仲間や旅行者、およびあなたがたの右手が所有する者(に親切であれ)。アッラーは高慢な者、うぬぼれる者を御好みになられない。”(クルアーン4:36)
預言者ムハンマドの周囲の男女は、神、そして他者に対する義務を常に思い起こさせられていました。預言者ムハンマドは、このように言って彼らの善行を促していたのが記録されています。「誰であれ、神と最後の日を信じる者は、隣人に危害を加えたり、迷惑をかけたりしてはならない。」また彼は教友たちだけでなく、神を信仰する者たち全員が従うべきこととして、同胞が飢えていたり、不幸な状況に甘んじたりしているのを放置してはならないことを挙げています。現代社会では、老人が見捨てられて孤独死したり、自分たちは食事に困っていないものの、その隣人や知り合いがひもじい思いをしていたりしますが、敬虔な先人たちの模範を忘れなければ、状況は改善するはずです。
教友の一人だったアブー・ザッルは、隣人たちにその余剰分を分け与えることの出来るよう、預言者ムハンマドからスープに水を注ぎ足すよう言われています2。別の教友アブドッラー・ブン・アムルは、羊を屠殺した後、彼の召使いにこう言っています。「私たちのユダヤ教徒の隣人におすそ分けしたか?」信仰者は、たとえそれが金銭的に価値の少ないものであっても、贈り物をし合うことが推奨されています。贈り物の真の価値とは、それを与える親切心なのです。贈り物をすることは、友情や相互扶助を促進します。預言者の妻アーイシャが、どの隣人に贈り物を届けるべきか彼に尋ねたとき、彼はこう答えています。「あなたの戸に一番近い人に、だ。」3まずは最も近い隣人への配慮に心がけるべきですが、イスラームはすべての隣人に心配りをするよう勧めます。それは、共同体全体の必要性や感情を考慮に入れるシステムなのです。
人がイスラームの教えを真に理解出来れば、共同体の一人の苦しみは、共同体全体の苦しみであることが分かります。隣人とは、不和や災難が降りかかったとき、また何らかの必要性が生じたとき、人が家族の次に頼ることの出来る存在なのです。隣人との悪い関係は、人生を悲惨なものにしかねません。同じ近所を共有する者同士が、宗教や人種に関わらずお互いを信頼し、頼りにすることは重要なことなのです。隣人同士は、お互いの名誉や富における損害の心配をせずに済む必要があります。預言者ムハンマドは、良き隣人はムスリムの人生における幸福の一部であると述べています。「信仰者に幸せをもたらすものの中には、実直な隣人、広い家、良き馬がある。」4良き隣人は安心感と安全を保証します。こうした理由により、神に忠実であることを信じる者にとって、隣人に対して親切にし、心配りを欠かさないことは重要なのです。預言者ムハンマドは教友たちに対し、隣人に危害を加えたり、悩ませたりしないよう警告しています。
1400年前と同様、今なお真理である伝承5として、義務の分よりも多く礼拝や断食に励み、喜捨を惜まなかったにも関わらず、隣人に対して辛辣な発言を止めなかった女性について、預言者ムハンマドが尋ねられているものがあります。彼は彼女がそれによって懲罰を受けることになる、地獄の住人の一人であると述べたのです。彼はその同じ伝承の中で、最低限の義務行為だけを果たし、喜捨をほんの少ししかしなかったものの、隣人に辛辣な言葉を吐かず、誰ひとりとして中傷しなかった別の女性について尋ねられています。預言者ムハンマドは彼女のことを天国の住人の一人として述べています。イスラームという宗教は、家族と隣人、そして共同体全体の連帯について多大なる強調をしているのです。
イスラームは信仰者たちに対し、隣人に思いやりを持ち、親切にするよう、常に忠告します。しかし、もしイスラームの教えに反して悪態をついたり、敬意を示さない隣人がいた場合にはどうすれば良いのでしょう? ムスリムとは忍耐強く、寛容で、遺恨をあらわにしません。信仰者とは、神による偉大な報酬を期待しつつ、品行方正な振る舞いと寛大な心によって、悪化した関係の修復に努める者です。信仰者とは、迷惑行為を可能な限り忍耐強く耐える者です。もしもそうした状況が耐え難いものとなったのであれば、そうした迷惑行為をおおやけにすることが最後の手段となります。
預言者ムハンマドはある男性に、悪い隣人との決別を示唆する行為として、道の真ん中で荷物をまとめるよう助言しています。するとその「悪い隣人」はすぐに謝罪し、彼が戻ってくるよう懇願しました6。自らの悪行がおおやけにされることを望む者はいません。それは、宗教によって最も高いモラル水準が求められているムスリムであれば尚更です。イスラームは敬意・寛大さ・容赦の度合いに重きを置き、隣人に対して示されるそれらの特質こそは、唯一なる真実の神への崇拝に内在する、倫理観・高徳さの実践なのです。
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