アダムの物語(1/5):最初の人間
- より アーイシャ・ステイシー (ゥ 2012 IslamReligion.com)
- 掲載日時 30 Jan 2012
- 編集日時 30 Dec 2019
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イスラームは、私たちにアダムの創造についての驚くべき詳細を提供してくれます。1キリスト教とユダヤ教の伝承は共に非常に似通っていますが、重要な場面においてクルアーンとは異なります。創世記においては、アダムが「大地の埃から創られた」と述べられており、タルムードでは泥がこねられてアダムが創られたとしています。
神は天使たちに言いました。
“「本当にわれは、地上に代理者を置くであろう。」と仰せられた時を思い起せ。かれらは申し上げた。「あなたは地上で悪を行い、血を流す者を置かれるのですか。わたしたちは、あなたを讃えて唱念し、またあなたの神聖を讃美していますのに。」かれは仰せられた。「本当にわれはあなたがたが知らないことを知っている。」”(クルアーン2章30節)
では人類最初の人間である、アダムの物語を見てみましょう。神は地球の元素を一通り含んだ、一握りの土からアダムを創造しました。アダム創造のための土を集めるよう、神によって天使たちが地上に送られたのです。それは赤、白、茶、黒の土でした。そこには柔らかくしなやかなものや、硬くザラザラしたものもありました。またそれらには山々や渓谷、不毛な砂漠や肥沃な平原などといった、あらゆる土地のものが含まれていました。アダムの子孫は、その祖先が創造された土質と同じように、多種多様となることが運命付けられていたのです。それら全てには異なる外見、性質、特徴が備わっています。
土か粘土か
クルアーンの全般に渡り、アダムが創造された土に関して多くの名前が言及されており、私たちはそれによってこの創造の方法論の一部についてを理解することが出来ます。アダムの創造の各段階において、その土には異なる名前が使用されています。大地から取り出された土は、神によって土、または粘土として言及されています。それに水が加えられると泥となり、放置して晒されると、水分が抜け粘着性のある粘土となります。それがさらに放置されると匂いを伴うようになり、濃い色となります。そして黒く、なめらかになるのです。神はこうした要素からアダムを形作ったのです。彼の魂なき身体は乾燥させられ、クルアーンで述べられているような音を出す土となりました。アダムは陶土に似通ったものとして形取られ、それはたたかれると鳴り響くような音を出したのです2。
栄誉ある最初の人間
そして神は天使たちにこう告げます。
“あなたの主が、天使たちに、「われは泥から人間を創ろうとしている。」と仰せられた時を思え。「それでわれが、かれ(人間)を形作り、それに霊を吹き込んだならば、あなたがたは伏してかれにサジダ(平伏)しなさい。」”(クルアーン38章71−72節)
神は最初の人間であるアダムに対し、無数の形で栄誉を与えています。神は彼に魂を吹き込み、自らの御手で彼を形作り、天使たちに対して彼に平伏すよう命じたのです。そして神は天使たちにこう告げました。
“…皆サジダ(平伏)したが、イブリース(悪魔)はサジダした者の中に加わらなかった。”(クルアーン7章11節)
崇拝行為は神のみに対して向けられますが、この天使たちによるアダムへの平伏行為は、敬意と栄誉を示す象徴でした。また、アダムの身体に生命が吹き込まれて振動した際、彼はくしゃみをし、即座に「神に賞賛あれ」と言ったため、神はアダムに対してその慈悲を授けたのだとも言われています。この部分はクルアーンおよび預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)にまつわる真正伝承集のどちらにおいても言及されてはいませんが、一部のクルアーン注釈書で触れられています。したがって、彼の生命の最初の瞬間から、彼は栄誉高き存在として認識され、神の無限なる慈悲に浴していたのです3。
また預言者ムハンマドによっても、神が自らの象徴としてアダムを創ったことが言及されています4。神はあらゆる面において比類なき独自の存在であり、私たちは神の姿を理解することも思い描くことも出来ません。よってこのことは、アダムが神と似通った姿で創造されたことを意味しているのではなく、比較の対象にはならないものの、神の持つ一部の属性が与えられたことを意味しています。彼は慈悲、愛情、自由意志などの属性を授けられたのです。
最初の挨拶
アダムは彼の近くに居た天使たちの集まりを訪れ、アッサラームアライクム(神の平安あれ)という挨拶をするよう指示されました。天使たちは「あなたにも神の平安と慈悲、そして祝福あれ)と返事しました。そのとき以来、この言葉は神に従う者たちの挨拶の言葉となったのです。アダムの創造の瞬間から、彼の子孫である私たちは平安を広めるよう指示されているのです。
代理人アダム
神は私たちに対し、人類を創造したのはかれを崇めるため以外の何でもないということを告げています。この世の全てのものは、アダムとその子孫のために、神を知り、かれへの崇拝の助けとなるよう創られたのです。神の無限なる英知から、アダムとその子孫は地上における代理人となることになっていました。それゆえ、神によってアダムはその任務を遂行するための教えを受けたのです。神はこう言及します。
“かれはアダムに凡てのものの名を教えた。”(クルアーン2章31節)
神はアダムに、全てのものの名前を識別して呼ぶ能力を授けました。彼は神によって言語、発声、そして会話の能力を授けられたのです。神は、知識に対する飽くなき探究心と愛情をアダムに吹き込みました。アダムが学ぶと、神は天使たちにこう告げました。
“「もし、あなたがた(の言葉)が真実なら、これらのものの名をわれに言ってみなさい。」と仰せられた。かれらは(答えて)申し上げた。「あなたの栄光を讃えます。あなたが、わたしたちに教えられたものの他には、何も知らないのです。本当にあなたは、全知にして英明であられます。」”(クルアーン2章31−32節)
すると神はアダムに対してこう言います。
“「アダムよ、それらの名をかれら(天使)に告げよ。」そこでアダムがそれらの名をかれらに告げると、かれは、「われは天と地の奥義を知っているとあなたがたに告げたではないか。あなたがたが現わすことも、隠すことも知っている。」と仰せられた。”(クルアーン2章33節)
アダムは天使たちに話しかけようとしましたが、彼らは神への崇拝に専念していました。天使たちには特定の知識や自由意志が与えられておらず、かれらの唯一の目的は神を讃え、崇拝することだけなのです。しかし、アダムには理性、自由意志、そして物事の目的などを識別する能力が授けられました。このことは、地上における彼の任務準備に一役を買いました。このようにアダムは物事の名称を全て知っていましたが、彼は天国で一人ぼっちでした。そしてある朝、アダムが目を覚ますと、そこに自分を凝視する一人の女性がいることに気付くのです3。
アダムの物語(2/5):イヴの創造と、悪魔の役割
- より アーイシャ・ステイシー (ゥ 2012 IslamReligion.com)
- 掲載日時 06 Feb 2012
- 編集日時 06 Feb 2012
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アダムは目を見開き、彼を凝視する女性の美しい顔を覗き込みました。アダムは驚きのあまり、なぜ彼女が創造されたのかを尋ねました。彼女は彼の寂しさを紛らわし、心の平穏をもたらすために創造されたことを打ち明けました。天使たちはアダムに質問をします。天使たちは、アダムには彼らが知らない物事の知識が備わっていること、そしてその知識とは人類が地上に居住するために必要なものであることを知っていました。彼らは言いました。「それは誰ですか?」アダムは答えました。「イヴです。」
イヴはアラビア語でハウワーと呼ばれます。これは「生のある」を意味するハイイを語源とします。アダムが天使たちに彼女の名がイブだと告げたのは、彼女が生ある存在である彼の身体の一部から創られたからです。
ユダヤ教とキリスト教でも同様に、イブはアダムの肋骨から創られたということを伝えていますが、ユダヤ教における伝承の逐語的翻訳では「肋骨」が時には「脇腹」とされることもあります。
“人びとよ、あなたがたの主を畏れなさい。かれはひとつの魂(アダム)からあなたがたを創り、またその魂から配偶者(イヴ)を創り、両人から、無数の男と女を増やし広められた方であられる。”(クルアーン4章1節)
預言者ムハンマドにまつわる伝承によると、イヴはアダムの睡眠中、彼の最も短い肋骨から創られ、彼女はそこから肉体をまとったとされます。彼(預言者ムハンマド)はイヴ創造の逸話を用いて、人々が女性に親切であるよう求めました。「ムスリムたちよ。私はあなたがたが女性に対して親切であるよう忠言する。彼女らは肋骨から創られたのであり、肋骨の最も歪曲した部分はその上部である。もしそれを真っ直ぐに直そうとするなら、それは折れてしまうだろう。また、もしそれをそのままにすれば、それは歪曲されたままなのである。それゆえ、私はあなたがたが女性を大事にするよう勧める。”(サヒーフ・ブハーリー)
天国の住まい
アダムとイヴは楽園で平穏な暮らしをしていました。このことも、イスラーム、キリスト教、ユダヤ教の伝承において合意されています。イスラームにおいて、楽園の全ては彼らのもので、彼らはそれを楽しんでいました。神はアダムにこう告げています。“あなたとあなたの妻とはこの園に住み、何処でも望む所で、思う存分食べなさい…”(クルアーン2章35節)クルアーンでは、この楽園がどこにあったのかを解き明かしませんが、注釈者たちはそこが地上ではなかったこと、そしてその場所がどこにあったのかという知識を得ても、そのことが人類を益することはないということで合意しています。有益なこととは、そこで起こった事件の教訓を理解することなのです。
神はアダムとイヴへ警告しました。“…この木に近寄るのであれば、不義を働く者となるであろう。”(クルアーン2章35節)クルアーンは、この木の種類を明白にはしていません。それに関する詳細は存在せず、そうした知識を求めることも、何の益にもならないからです。ただ、アダムとイヴは平穏な暮らしをしており、その木の果実を食べることが禁じられていたことが知られています。そしてサタンは、人類の弱みに付け込もうとそこで待ち伏せていたのです。
サタンとは
サタンとは、ジンの世界からの生き物です。ジンとは、神によって炎から創られた創造物です。かれらは天使、人類のどちらとも異なる存在ですが、人類と同じように理性を持ち、善悪を見分けることが出来ます。ジンはアダムの創造よりも前から存在しており1、サタンは天使たちよりも高い地位に上げられる程、その中で最も誠実な者だったのです。
“それで天使たちは、サタンを除き一斉にサジダした。かれは一緒にサジダすることを拒否した。かれは仰せられた。「サタンよ、あなたが一緒にサジダしなかったのは何故か。」かれは申し上げた。「わたしにはあなたが泥で形作り、陶土から御創りになった人間にサジダするようなことは、出来ません。」かれは仰せられた。「それならあなたはここから下がれ。本当にあなたは、呪われている。この呪いは、本当に審判の日まであなたの上にあろう。」”(クルアーン15章30−35節)
サタンの役割
サタンはアダムとイヴの楽園におり、彼ら二人とその子孫を欺くことを誓っていました。サタンは言いました。“「…わたしはあなたの正しい道の上で、人々を待ち伏せるでしょう。そしてわたしは、かれらを前から後ろから、そして右からも左からも襲いましょう…”(クルアーン7章16−17節)サタンは傲慢で、自らをアダム、つまり人類よりも優れた存在であると見なしていました。かれは狡猾で、人類の弱みを理解し、彼らの愛着と欲望が何であるかを認識していました2。
サタンはアダムとイヴに「あの木の実を食べなさい」と言ったのでも、神に背きなさいとはっきり告げた訳でもありませんでした。かれは二人の心に囁きかけ、欲望と不穏な考えを植え込んだのです。サタンはアダムとイヴに言いました。“…あなたがたの主が、この樹に近付くことを禁じられたのは、あなたがたが天使になり、または永遠に生きる(のを恐れられた)からである…”(クルアーン7章20節)彼らの頭はその木のことで一杯になり、ある日ついに彼らは、その木の実を食べる決心をしてしまいました。アダムとイヴは全人類が行う行動を取ってしまったのです。すなわち、彼らは煩悩と悪魔の囁きに苛まされ、神の警告を忘れてしまったのです。
ユダヤ教とキリスト教の伝承がイスラームとの大きな相違を見せ始めるのは、ここからです。神の言葉であるクルアーン、そして預言者ムハンマドにまつわる伝承集のどこにも、サタンが蛇の形をとってアダムとイヴの前に現れたことには言及されていません。
イスラームでは決して、二人の内イヴが劣っているということや、彼女がアダムを誘惑して神に背かせたということなどを示したりはしません。木の実を食べたことはアダムとイヴ双方が犯した過ちなのです。彼らは二人とも同様の責任を負ったのであり、それはキリスト教で言われるような原罪のことではなく、アダムの子孫が先祖の犯した罪によって罰を受けたりすることでもありません。それは一つの過失だったのであり、神はその果てしなき叡智と慈悲によって二人を赦したのです。
アダムの物語(3/5):降下
- より アーイシャ・ステイシー (ゥ 2012 IslamReligion.com)
- 掲載日時 06 Feb 2012
- 編集日時 06 Feb 2012
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イスラームはキリスト教の概念である原罪論、つまり全人類はアダムの行為によってみな罪深い状態で生まれてくるという概念を否定します。神はクルアーンの中でこう述べます。
“荷を負う者は、他人の荷を負うことはない。”(クルアーン35章18節)
全人類は自らの行為だけに責任を持ち、罪の無い純粋な状態で生を受けるのです。アダムとイヴは過ちを犯し、神への真摯な悔悟をし、神はその無限の慈悲によって二人を赦しました。
“二人がそれを食べると、恥かしいところがあらわになった。それで二人はその園の木の葉でそこを覆い始めた。こうしてアダムは主に背き、誤ちを犯した。その後、主はかれを選び、悔悟を赦され御導きになられた。”(クルアーン20章121−122節)
人類には、過ちと忘却にまつわる長い歴史があります。しかしながら、なぜアダムはこのような過ちを犯したのでしょうか? アダムにはサタンによる囁きと謀略の経験がなかったのです。サタンが神の命令に背いたとき、アダムはサタンの傲慢さを目にしていました。彼はサタンが敵であることを知っていましたが、サタンの謀略と企みについては熟知していなかったのです。預言者ムハンマドはこう述べています。
“知識を持つことと、実際にそれを目にすることは違うのである。”(サヒーフ・ムスリム)
神は述べます。
“こうしてかれ(サタン)は二人を欺き、誤り導いた。”(クルアーン7章22節)
アダムが学び、経験を積むことの出来るよう、神は彼を試したのです。このようにして神はアダムを神の預言者、そして代理人としての地上での役割に備えさせました。この経験により、アダムはサタンが狡猾で恩知らずな、人類の宿敵であるという大きな教訓を得たのです。アダムとイヴ、そして二人の子孫は、彼らが天国から追放された原因がサタンであることを知っています。神への従順、そしてサタンへの敵意は天国へ戻ることの出来る唯一の道なのです。
神はアダムに告げました。
“あなたがた二人は一緒にここから(地上へと)下がれ。あなたたちは互いに敵である。もしあなたがたにわれから導きが下れば、誰でもわが導きに従う者は迷うことはなく、また不幸に陥ることもないであろう。”(クルアーン20章123節)
クルアーンでは、アダムがその後、主の言葉を授かったと述べられています。それは神の赦しを祈願する祈りの言葉でした。この祈りの言葉は非常に美しいもので、罪の赦しを乞うときに使われるものです。
“主よ、わたしたちは誤ちを犯しました。もしあなたの赦しと慈悲を御受け出来ないならば、わたしたちは必ずや失敗者の類となってしまうことでしょう。”(クルアーン7章23節)
人類は未だ過ちや失敗を犯し続け、それを通して私たちは自分自身に損害を与えます。私たちの罪や過ちは、神に害を与えたことはありませんし、これからも決してそうすることはありません。もし神が私たちを赦し、慈悲を垂らしてくれなければ、私たちは間違いなく失敗者となります。私たちこそ、神を必要としているのです。
“「…地上にはあなたがたの住まいと、一定の期間の恵みがあろう。」かれは仰せられた。「そこであなたがたは生き、死に、またそこから(復活の時に)引き出されるであろう。」”(クルアーン7章24−25節)
アダムとイヴは天国を去り、地上に降り立ちました。二人の降下は堕落によるものではなく、威厳を伴うものでした。日本語の文法においては名詞の数を明示しないことが一般的ですが、アラビア語に関してはそうではありません。アラビア語においては単数形に加え、双数形という文法上の区分が存在し、複数形は三つ以上の場合に使用されます。
神が“一緒にここから(地上へと)下がれ”と言ったとき、かれは複数形の言葉を使用したため、それはアダムとイヴだけに話しかけていたのではなく、二人とその子孫全体、つまり人類に対するものだったことを指し示しています。アダムの子孫である私たち人類は、この地上に属しているのではなく、この滞在は一時的なものであることを“一定の期間”という言葉は示しています。私たちは来世に属するのであり、天国か地獄のどちらかが運命付けられているのです。
自由意志
上記の経験は重要な教訓であり、自由意志についても提示されています。もしアダムとイヴが地上で暮らすなら、二人はサタンの計略と企てに対して注意深くなければなりませんし、罪の重大な成り行きと、神の無限なる慈悲と赦しについても理解しなければなりません。神はアダムとイヴが木の実を食べることをあらかじめ知っていました。またかれは、サタンが二人の純粋さを奪い去ることも承知していたのです。
神はあらゆる出来事の結果をあらかじめ知っており、それが起きることを許可しますが、強制してはいません。アダムには自由意志があり、自分自身の行為によって発生する成り行きの責任を負っていたのです。人類にも自由意志があるため、神に背くことも出来ます。しかしそこからも結果が発生するのです。神はかれの指令に従うものたちを称賛し、偉大なる報奨を約束しますが、かれに背くものたちを咎め、そうすることに対し警告をします1。
アダムとイヴが降り立った場所
地上のどこにアダムとイヴが降り立ったのかという問題に関しては多くの報告が存在しますが、それらはどれ一つとしてクルアーンとスンナに基づいたものではありません。それゆえ、彼らの降下に関しては重要なことではなく、そのことを知ったとしても有益性はないのです。
しかしながら、アダムとイヴが地上に降りたのは金曜日であることが判明しています。金曜日の重要性を述べる伝承の中で、預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)はこのように言っています。
“太陽が上って以来、最良の日は金曜日である。この日にアダムは創られ、この日に彼は地上へと降り立ったのである。”(サヒーフ・ブハーリー)
アダムの物語(4/5):地上における人生
- より アーイシャ・ステイシー (ゥ 2012 IslamReligion.com)
- 掲載日時 13 Feb 2012
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アダムとイヴは楽園を離れ、地上での人生を開始しました。神は多くの方法によって、彼らに準備をさせていました。かれはサタンの策謀と囁きかけに対する奮闘の努力を経験させていましたし、またアダムにあらゆるものの名を教え、それらの固有性と有益性について指示していました。アダムは地上における代理人、そして預言者という立場になりました。
神の最初の預言者であるアダムは、神への崇拝、そしてかれによる赦しを得る方法を妻と子供たちに教える責任を負っていました。アダムは神の法を確立させ、家族を扶養すると同時に、大地の開墾とその管理法を学びました。彼の任務は存続、開拓、建築、植民に基づいたものでした。彼は神の指示通りに生き、大地の世話と管理をし、向上の努力を欠かさない子孫の養育に励んだのです。
アダムの四人の子供
アダムとイヴが最初に授かった子供たちは四人で、まずカインとその妹が双子として生まれ、次に生まれたアベルとその妹も双子でした。アダムの家族は平穏と調和と共に暮らし、カインは土地を耕し、アベルは家畜の世話をしていました。時は流れ、アダムの息子たちは結婚をする年齢になりました。預言者ムハンマドの教友たち(イブン・アッバース、イブン・マスウードなど)による伝承によると、アダムの息子たちの結婚相手は兄弟の双子の妹であったことが分かっています。それゆえ、地球を繁栄させるための神の計画とは、アダムの二人の息子による兄弟の双子の妹との結婚であったことを私たちは知ります。
どうやら容姿の美しさは、人類の始まりから男女を惹き付ける役割を果たしていたです。カインは自分の配偶者に満足出来ず、弟を嫉妬し、父の命令に背くようになりました。彼はそうすることによって神に背いたのです。このように、神は善と悪の性向をもって人類を創造しましたが、自らの生得の衝動を抑えて努力することは、私たちにとっての神による試練の一部なのです。
神はカインとアベルに犠牲を捧げるよう命じました。これによって神はより良い犠牲を捧げた方に恩寵を与えることにしたのです。カインは劣悪な作物を捧げ、アベルは最良の家畜を捧げました。そして神がアベルの犠牲を認めたためにカインは激昂し、弟を殺害すると脅迫しました。
“(ムハンマドよ、)アダムの二人の息子の物語の真実を民に語れ。彼ら二人が犠牲を捧げた時、1人は受け入れられたが、もう一人は受け入れられなかった。言った。「私はきっとお前を殺してやる。」”(クルアーン5章27節)
アベルは兄に対し、神を畏れ、神に仕える者の善行は受け入れられ、傲慢かつ利己的で、神に反抗的な者の善行は拒否されることを忠告しました。
“かれ(アベル)は(カインに答えて)言った。「神は、ただ主を畏れる者だけ、受け入れられる。たとえあなたが、私を殺すためにその手を伸ばしても、私はあなたを殺すため、手を伸ばしはしない。私は万有の主アッラーを畏れる。”(クルアーン5章27−28節)
最古の殺人
“しかし彼の(利己的な)心は、その弟の殺害を望ましいこととし、遂に彼を殺して、失敗者の類となった。”(クルアーン5章30節))
預言者ムハンマドにまつわる伝承によると、カインは激情して鉄の塊で弟の頭を殴ったとされています。また別の伝承では、カインはアベルの睡眠中に彼の頭を殴打したとされています。
“そのとき神は、1羽の大カラスを遣わして地を掘らせ、その弟の死体を、いかに覆うべきかをかれに示された。かれ(カイン)は言った。「ああ情けない。弟の死体を葬るのに、私はこのカラス程のことさえ出来ないのか。」こうしてかれは後悔する者の類となった。”(クルアーン5章31節)
アダムは悲しみに打ちひしがれました。彼は長男と次男を二人同時に失くしたのです。一人は殺害され、もう一人は人類最大の敵であるサタンの側に付いてしまいました。アダムは忍耐強く息子のために祈り続けると同時に、大地の管理をし続けました。また彼は多くの子供たち、孫たちに神のことを教えました。彼は彼らに自らとサタンとの遭遇の談話をし、サタンの謀略と企みに気をつけるよう促しました。長い年月が流れ、アダムは年老いて、彼の子供たちは各地へと拡散していきました。
アダムの死
人類は皆、アダムの子です。預言者ムハンマドにまつわる一つの伝承では、アダムは神によって彼の子孫の様子を示されたということが伝えられています。アダムは預言者ダビデの美しい眼光を見て感嘆し、神にこう言いました。「神よ、私の生命の40年分を彼にお授けください。」神はアダムの申し出を受け入れ、それは記録の上に封緘されたといいます。
アダムの寿命は1000年のはずでしたが、960年目に死の天使がアダムの元を訪れました。アダムは驚いて言ったそうです。「しかし、私にはまだ40年残っているはずです。」死の天使は彼による預言者ダビデへの40年の贈呈について思い起こさせましたが、アダムは否定しました。長い年月を経て預言者ムハンマドはこう言っています。「アダムが否定したため、アダムの子も否定し、アダムが忘れたため、アダムの子も忘れたのです。アダムが過ちを犯したことから、その子も過ちを犯すのです。」(アッ=ティルミズィー)
アラビア語で人類にあたる言葉はインサーンですが、それは忘却を意味する言葉、ニスヤーンという語源から来ています。これは人間性の一部であり、私たちは何かを忘れるとそのことを否定し、拒否するものです。アダムは(嘘を付いたのではなく、)忘却したのですが、神は彼を赦しました。そしてアダムは神の意思に服し、死んだのです。そして天使たちが降下し、預言者アダムの遺体を奇数回、洗浄しました。彼らは塚穴を掘り、人類の父であるアダムの遺体を埋葬しました。
アダムの後継
アダムは死ぬ前に、彼の子供たちに対し、神は決して彼らを見放しはせず、導きをなしにさまよわせることをしないことを告げました。彼は子供たちに対して、神は他の預言者たちを遣わすが、彼らは皆同じこと、つまり唯一なる真実の神への崇拝への呼びかけをするであろうということを告げていました。アダムは彼の後継者として、息子のセツを選びました。
アダムの物語(5/5):最初の人間と近代科学
- より アーイシャ・ステイシー (ゥ 2012 IslamReligion.com)
- 掲載日時 13 Feb 2012
- 編集日時 13 Feb 2012
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イスラームにおいては、神への信仰と近代科学知識との矛盾は発生しません。実際、中世では何世紀にも渡り、ムスリムたちが科学的知識の研究において世界の最先端を走っていたほどです。約14世紀も前に啓示されたクルアーン自体も、近代科学に支えられる事実と表象に満ちています。ここでお話しするのは、それらの内の三つについてです。それらの内、言語の発達とミトコンドリア・イヴ(遺伝学)は、科学の研究において比較的新しい分野です。
クルアーンはムスリムについてこう述べます。“…天地の創造について熟考する者…”(クルアーン3章191節)
熟考の対象の一つとしては、このように述べられています。
“実に、われは泥から人間を創ろうとしている。”(クルアーン38章71節)
実際、土に含まれている多くの元素は人間の身体にも含まれています。 陸生生物にとって最も重要な構成要素は、大地の上層部にあります。あの黒ずんだ薄い層には有機的に豊かな成分を含んでおり、植物が根を広げるのに適しています。この重要な層の土中において、微生物はミネラルという価値ある資源を合成し、その周囲と上部の無数の生物へと提供するのです。
ミネラルとは地中に存在する無機質な元素のことであり、人間の身体はそれを生成することが出来ません。それは身体機能において重要な役割を果たし、生命と健康の維持に必要なため、必須栄養素とも呼ばれます1。ミネラルは、研究所や工場などで人工的に生成することも出来ません。
細胞の質量の内、65〜90%は水で構成されていますが、水(H2O)は人体の大半を占めています。したがって、人体の質量の大半は酸素であるということになります。そして有機分子の基本単位である炭素がその次にきます。人体の質量における99%は、酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リン2といった、たった6つの元素によって成り立っています。
人体には、地表にあるほぼ全てのミネラルが含まれています。それらはイオウ、カリウム、亜鉛、銅、鉄、アルミニウム、モリブデン、クロム、プラチナ、硼素、シリコン、セレニウム、フッ素、塩素、ヨウ素、マンガン、コバルト、リチウム、ストロンチウム、鉛、バナジウム、ヒ素、臭素などです3。
次の節も熟考に値するものです:
“かれはアダムにあらゆるものの名を教え…”(クルアーン2章31節)
アダムはあらゆるものの名称を教えられており、理性の力や自由意志が与えられていました。彼はものごとを分類する方法、それらの有益性を理解する方法を学んでいたのです。神がアダムに言語能力を教えたというのは、このようなことなのです。つまり、かれはアダムに、問題の解決のために知識を応用し、目的達成のために計画を立てて決断することが出来るよう、いかに考えるべきかを教えたのです。アダムの子孫である私たちは、この世に存在し、最善の方法で神を崇拝することが出来るよう、これらの能力を受け継いぎました。
言語学者たちによれば、現在世界には三千の独立した言語が存在しており、ある言語の話者は別の言語を理解することは出来ませんが、これらの言語は根本的には非常に似通っており、各自の「人間語」を話すことは出来るのです4。
言語とは符号(単語やジェスチャー)を組み合わせて意味のある文を作るための複雑な規則を学ぶことに関わる、特別なコミュニケーションの形です。言語の存在は、単語と文法という二つの単純な原則の上に成り立っています。
単語とは、音、符号、意味の恣意的な組み合わせです。例えば英語の単語である「cat」は、実際の猫には見えませんし、その音もしませんが、私たちは子供の時にこの文字の組み合わせが猫であると暗記してきたため、そう認識します。文法とは、単語を成句や文章として成立させるよう組み合わせる規則のことです。三千もの言語のすべての話者が、みな例外なく言語上の四つの規則を学ぶことは、驚くべき事実でしょう5。
第一の言語規則は音韻論です。それはつまり、意味のある発音に関わるものです。音素は基本的な発音であり、私たちは音素を組み合わせて、単語を形成させます。それは第二の言語規則である語形論を学ぶことにより達成されます。語形論とは、意味のある単語や発音として音素を組み合わせる体系です。形態素とは、言語において意味を持つ最小の言語単位のことです。単語を構成する形態素の組み合わせを学んだ後、私たちは文章に意味を持たせることが出来ることを知ります。第三の言語規則は統語論、または文法と呼ばれるものです。これは、単語など意味をもつ単位を組み合わせて文を作る文法的規則を意味します。第四の言語規則である意味論は、様々な文章や文脈における単語や成句の意味を特定させるものです。
世界のどこに住んでいるかに関わらず、すべての子供たちは同じ四つの言語学的段階を踏むのです。それは内的な言語的要素によるものであり、それらの要素は私たちが発音したり、言語能力を得たりすることの手助けとなるのです。著名な言語学者であるノーム・チョムスキーは、すべての言語では共通する普遍的文法が共有されており、子供たちはこの普遍的文法を学ぶための知的プログラムを受け継いでいると述べています6。
熟考に値する第三の節は、子孫繁栄に関するものです。
“人々よ、あなたがたの主を畏れなさい。かれはひとつの魂(アダム)からあなたがたを創り、またその魂から配偶者(イヴ)を創り、両人から無数の男女を増やし広められた方である。”(クルアーン4章1節)
すべてのmtDNA系統(アフリカ、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ)が一人の女性に行き着くという発見は、一般的に「ミトコンドリア・イヴ」論と呼ばれています。一流科学者たちや7、最先端を行く研究者たちによると、地球上の人間全ては、ある特定の遺伝情報であるミトコンドリア・DNA(mtDNA)を一人の女性まで遡るとされています。「ミトコンドリア・イヴ」のmtDNAは、母親からその娘(男性も保有しますが、遺伝はされません)へと何世紀にも渡って受け継がれてきており、現在では全ての人々が共有しているのです8。それは上記からも推測出来るようにX染色体から遺伝されるため、一般的にイヴ論と呼ばれます。科学者たちは同様に、父親から息子に受け継がれ、母親のものとは再結合されないもの、すなわち男性のみによって遺伝されるDNAのY染色体(「アダム論」とでも呼ばれるべきものでしょう)も研究中です。
これらは、神がクルアーンを通して私たちに対し、熟考することを促す多くの驚異の内の三つに過ぎません。全宇宙は神によって創造され、かれの法を従い、守るのです。したがってムスリムは知識の探求、宇宙の神秘、そして神の創造における「しるし」を見つけることを奨励されているのです。
Footnotes:
1 (http://www.faqs.org/nutrition/Met-Obe/Minerals.html)
2 Anne Marie Helmenstine, Ph.D., Your Guide to Chemistry.
3 Minerals and Human Health The Rationale for Optimal and Balanced Trace Element Levels by Alexander G. Schauss, Ph.D.
4 Pinker, S., & Bloom, P. (1992) Natural Language and natural selection. In Gray. P. (2002). Psychology. 4th ed. Worth Publishers: New York
5 Plotnick, R. (2005) Introduction to Psychology. 7th Ed .Wadsworth:USA
6 Gray. P. (2002). Psychology. 4th ed. Worth Publishers: New York
7 Douglas C Wallace Professor of Biological Sciences and Molecular Medicine. At the University of California.
8 Discovery channel documentary – The Real Eve.
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