イスラームにおける非ムスリムの権利(12/13):社会保障

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説明: 貧しく困窮している非ムスリムは、イスラーム法の下で社会保障を受ける権利を有します。歴史のなかで、非ムスリムが公的資金から受給していた例を見てみましょう。

  • より IslamReligion.com(サーリフ・アル=アーイド博士による執筆)
  • 掲載日時 10 Dec 2012
  • 編集日時 10 Dec 2012
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The_Rights_of_Non-Muslims_in_Islam_(part_12_of_13)_001.jpg近代の福祉国家は、貧しい市民に福祉を提供していますが、イスラームではあらゆる国家に先行して社会保障を実施していました。イスラーム法では、ザカー(義務の喜捨)とサダカ(任意の喜捨)によりムスリムに必要な経済的援助を与えます。ザカーは裕福なムスリムが貧しいムスリムを支援するための義務であり、サダカは困窮者の手助けを希望する者の個人的裁量に任されました。イスラームによって提供されたこの社会保障は、非ムスリムにも適用されました。イスラーム法は、ムスリム・非ムスリムを問わず、国家が障害を持つ働くことの出来ない市民を養うことも命じます。彼らは公的資金から受給されますが、為政者がそうしなかった場合、それは怠慢から来るものなのです。歴史には、ムスリムが非ムスリムに社会保障を提供した多くの例が記録されています。イスラームにおける第二のカリフ、ウマル・ブン・アル=ハッターブは、ある家の前で物乞いをする盲目の老人を見かけました。ウマルは彼がどの宗教に属するのかを尋ねました。老人は彼がユダヤ教徒であると述べました。ウマルは彼に尋ねました。「なぜあなたはそんなことをしているのですか?」老人は言いました。「そんなことは私に聞かないでくれ。貧困と老年に聞いてくれ。」ウマルはその老人を自宅に連れ帰り、自分のお金から彼に分け与え、財務長官にこう命じたのです。「この老人、そして彼と同様の境遇にある人々の世話をしなければならない。我々は彼のような人々に尽くしてこなかった。我々と共にある人々は、老年に達して惨めになるようであってはならないのだ。」また、ウマルは彼、そして同様の人々からジズヤの支払いを免除したのです1

ハーリド・ブン・アル=ワリードによるイラクの都市ヒーラの人々への手紙には、別の例を見出すことが出来ます。彼による停戦協定の申し出には、このように書かれています。

「もしも神が我々に勝利をもたらすのであれば、契約の民は保護されるであろう。彼らには神により約束された諸権利があるのだ。それは神がかれの諸預言者に対して課せられた最も厳格な契約なのである。また彼らには決して破ってはならない義務が課せられている。もし彼らが征服されたなら、彼らは快適な生活をし、必要なものすべてが与えられる。働くことの出来ない老人、身体障害者、自らの地域で喜捨を受給している者たちからはジズヤの支払いを免除するよう、私は命じられている。ムスリムの土地、またはムスリムが移住した共同体に居住する限りにおいて、彼らと彼らの扶養家族には公庫からの支給を受ける。もし彼らがムスリムの土地から移住したのであれば、彼らと彼らの扶養家族はいかなる利益を受け取る資格もなくなる。」2

別の例は、二代目正統カリフ、ウマル・ブン・アル=ハッターブがダマスカスを訪れた際にも見られます。彼はキリスト教徒のハンセン病患者の集団の前を通りがかりました。彼は彼らへの喜捨と定期的な食料支給がされるよう、命じました3

初期カリフの一人として著名なウマル・ブン・アブドル=アズィーズは、イラクのバスラにいる彼の代理人にこうした手紙を記しています。「あなたの地域に居住する契約の民で、老年に達し、稼ぎを得ることが出来ない者を探し、彼らが必要性を満たすことの出来るよう、公庫から定期的に支給するのだ。」4

初期のムスリムの一部は、ラマダーン後の喜捨(ザカートル=フィトル)を、次のクルアーンの節の理解に基づき、キリスト教徒の修道士たちに支給していました5

“アッラーは、宗教上のことであなたがたに戦いを仕掛けたり、またあなたがたを家から追放しなかった者たちに親切を尽し、公正に待遇することを禁じられない。本当にアッラーは公正な者を御好みになられる。アッラーは只次のような者を、あなたがたに禁じられる。宗教上のことであなたがたと戦いを交えた者、またあなたがたを家から追放した者、あなたがたを追放するにあたり力を貸した者たちである。かれらに縁故を通じるのを(禁じられる)。誰でもかれらを親密な友とする者は不義を行う者である。”(クルアーン60:8−9)

働く権利、住居の権利、移動の権利、就学の権利など、その他の諸権利も存在しますが6、それらが基本的であり当たり前のものとして受け取られていることから、本稿では省略しました。しかし、結論へと進む前に、次の点が指摘されなければならないでしょう。本稿では、ムスリム諸国に住む非ムスリムが、非ムスリム諸国では与えられないような諸権利を享受出来ることを明確にしました。一部の読者の方々は、それらの権利は歴史上すでに存在しており、ムスリム諸国に住む非ムスリムの経験は、現在異なるものだと異議を唱えるかもしれません。著者の個人的な認識としては、依然として非ムスリムはそれらの諸権利の一部、あるいは更に多くを享受しています。全能なるアッラーは、私たちに誠実であるよう命じるのです。

“あなたがた信仰する者よ、証言にあたってアッラーのため公正を堅持しなさい。仮令あなたがた自身のため、または両親や近親のため(に不利な場合)でも、また富者でも、貧者であっても(公正であれ)。アッラーは(あなたがたよりも)双方にもっと近いのである。だから私欲に従って、(公正から)逸れてはならない。あなたがたが仮令(証言を)曲げ、または背いても、アッラーはあなたがたの行うことを熟知なされる。”(クルアーン4:135)

さらに、ムスリム諸国に住む非ムスリムの状況を、非ムスリム諸国に住むムスリムの状況と比べたのであれば、それが現在であれ過去であれ、非常に大きな格差を見出すでしょう。十字軍遠征の際や、スペインでの異端審問、または中共・ソビエト連邦において、ムスリムたちはどのような扱いを受けてきたでしょう? 現在においてもバルカン半島、ロシア、パレスチナ、インドでは何が起きているでしょうか? 公正さ、真実、正義に基づいた答えを出すためには、熟考が必要とされます。アッラーこそは最も公正な審判であり、かれはこのように述べています。

“あなたがた信仰する者よ、アッラーのために堅固に立つ者として、正義に基いた証人であれ。人びとを憎悪するあまり、あなたがたは(仲間にも敵にも)正義に反してはならない。正義を行いなさい。それは最も篤信に近いのである。アッラーを畏れなさい。アッラーはあなたがたの行うことを熟知なされる。”(クルアーン5:8)



Footnotes:

1 Abu Yusuf, Kitab al-Kharaj, p. 136

2 Abu Yusuf, Kitab al-Kharaj, p. 155-156

3 Qaradawi, Yusuf, ‘Ghayr al-Muslimeen fil-Mujtama’ al-Islami,’ p. 17

4 Abu Ubayd, al-Amwaal, p. 805

5 Sarkhasi, ‘al-Mabsut,’ vol 2, p. 202

Jassas, ‘al-Ahkam ul-Quran,’ vol. 3, p. 215

6 Public Regulations Relevant to non-Muslims, p. 43-58.

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