イエスの再臨(1/5)

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説明: イエスの再臨に関する、キリスト教徒とムスリム間の類似点と相違点とは? また、ユダヤ教における終末のメシアについて。

  • より ジェレミー・ボルター
  • 掲載日時 19 Mar 2012
  • 編集日時 18 Dec 2023
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The_Return_of_Jesus_(part_1_of_5)_2_001.jpgイスラームとキリスト教は共にイエスの再臨を待望しており、共にその時に起きるであろう試練と苦難を予期しています。これらの試練の多くのテーマは似通っていますが、詳細と定義に関しては非常に異なります。双方の宗教は共にその信仰者の共同体が最終的な勝利者となることを予期しますが、キリスト教側では彼らが新約聖書の福音、およびキリストを「救世主」、「神の化身」であると信じる者たちであるとし、一方のムスリム側は唯一・真実の神に従う、純粋な一神教を信じる者たちであることを知っています。

双方の宗教において、イエスの再臨の前に様々な兆候が現れるとされています。それらは一般的な描写においては類似していますが、その詳細は幾分か異なります。双方の宗教は共に、イエスの再臨に先がけ、ムスリムからはマスィーフ・ダッジャール(偽メシア)、そしてキリスト教からは反キリストと呼ばれる巨大かつ強力な虚偽と誘惑が発生するとします。この出来事の前にはその他の兆候が起き、それらには不道徳、姦通、殺人、犯罪、無法、放蕩、そして宗教離れや真の知識からの遠のきといった物事の蔓延が含まれることで、双方の宗教は一致しています。これらの社会的不安定の後には大量殺戮1の戦争、自然災害が続々と続きます。しかし、これらの詳細と発生時は、同じ信仰内においても大幅に異なります。キリスト教が「再臨」についていかに考えるかは、どのような教義を持つかによって異なり、次の四つの見解が有力的なものです。歴史的・ディスペンセーション主義的「前千年王国説」、「黙示録預言既成説」、「後千年王国説」そして「無千年王国説」です2

前千年王国説3には、2つの解釈が存在します。双方共にイエスの再臨と、反キリストへの勝利の後、邪悪な魂が復活されるまでの千年間、イエスが「選民」と共に地上を支配するとし、また反キリストはサタンを解放するとしています4。双方は再臨の際の出来事に関して大きな相違を見せています。

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ディスペンセーション主義・前千年王国説

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歴史的・前千年王国説

双方は反キリストが支配する試練の7年間においてそれが起きることに同意しますが、一方はイスラエルへのユダヤ教徒の帰還とソロモン神殿の再建がその7年間に起きるとし、もう一方はイエスがエルサレムを再び首都とし、彼の支配期間においてソロモン神殿を再建するとします。前者では、教会の過去の選民たちは試練の前に復活させられ、再臨したイエスと共に統治することになり、誠実なユダヤ教徒たちは反キリストに立ち向かい、試練の最後に死した英雄たちと共に復活させられる、平和と豊潤の時代の先駆者であるとします。後者では、すべての選民たちの「携挙」がイエスの再臨と共にもたらされ、その後も彼らの子孫やそれに値する千年王国の市民たちにもたらされるとします。 最終的には、復活した反キリストによってサタンが解き放たれたとき、大きな戦いがサタンとその手下によって戦われると、偽預言者は敗れ、地獄に放り込まれ、世界の終わりが到来します。ここでも、双方の解釈は異なります。歴史主義派はゴグとマゴグこそがサタンが解き放たれた際に率いる国家であると見なしますが、ディスペンセーション主義派はサタンが騙された国家の軍隊を率いることについては同意しますが、ゴグとマゴグは彼らには含まれないとします5

悪の諸勢力が敗れ去ったとき、山々は崩れ、地球は更地となり、人々には審判が下されます。イエスの真の信仰者には天国、そして神との永久のコミュニオンが与えられ、不信仰者と悔悟しなかった罪人には地獄、そして神との永久の決別が与えられるのです。

黙示録預言既成説とは、前千年王国説に対比する2つの見解において見出すことの出来る一般的な名称です。それは審判に関して、ソロモン神殿破壊の際にイエスの再臨が既に起きたのであるとします。つまり、彼らは人々の死の際に審判が下されると見なしているのです。それゆえ、地球は不滅であり、神についての信仰と真実を完璧にすることは、神によって定められた永続的な義務であるとします6。黙示録預言既成説では、完璧化の瞬間にイエスの再臨が起き、彼は救済を達成した人々を永久に統治するとされます。

後千年王国説では、イエスの千年間の統治を逐語的ではなく、比喩的なものとし、すでに始まっているものと見なします。イエスはこの瞬間も文字通り地球の王であり、人の死に際して裁きを下し、キリスト教会は信仰の完璧化とサタンの打倒の過程にあるとします。そしてイエスが反キリストを倒すために再臨すると世界の終わりが到来し、彼と共に統治をする教会を設立するとします。

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後千年王国説

無千年王国説7も、千年間の統治は比喩的なものであり、すでに確立したものであるとしますが、前千年王国説とは異なり、審判の日は善と悪を切り離し、それらを永久に目的地へと割り当てる日であると見なします。

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無千年王国説

これらの見解はたびたび部分的に一致するため、一つの教義が他の教義とどのように異なるのか混乱されることが多いのです。しかしながら、それらすべての見解は、イエス統治と彼の再臨の役割におけるイスラーム的見解とは符合しません。

イスラームではイエスの再臨を、未だ果たされていない彼の人生と任務の完遂であると見なします8。真のメシアとして終末、彼には神から授けられた偽メシアを打倒する力があります。彼による統治期にはゴグとマゴグの襲来が起き、イエスでさえも倒すことが出来ませんが、彼は神に祈り、神自ら彼らを破滅させます。ゴグとマゴグの最後が訪れると、すべての人々が信じること、あるいは少なくとも従うことになる神の代理人としてのイエスの統治による世界的覇権が始まります。彼はムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)の教えによる神の法(イスラーム)に基いて統治し、70〜75歳で亡くなります。この時代においては、世界中の誰もが豊かになり、平和が訪れます。そして彼が逝去し埋葬された後、すべてのムスリムは微風に吹かれてこの世を去り、来世に行きます。地上に残る人々は不信仰者たちのみで、彼らだけが地球の最後を目の当たりにすることになります。

イスラームによって述べられるこれらの出来事の多くは、ユダヤ教における終末のメシアの概念と共通しますが、彼らはイエスが統治することになる法はムハンマドのものではなく、モーゼ(二人に神の称賛あれ)の法であるとします。イスラームとユダヤ教は双方とも、メシアの再臨は地球の最後において信仰者を本質的に団結させるものであると見なします。また双方ともに彼の役割とは、悪の勢力との神の戦争における指導者であり、この戦争の後には神の法とともに世界中に平和が到来するものであると見なしています。

双方の相違点とは、後の時に現れる人物は誰なのかという部分です。ユダヤ教におけるメシアとは、イスラエルとソロモン神殿、そしてすべての儀礼を再建するユダヤ教徒の指導者でなければなりませんが、ムスリムにとっては純粋なイスラームを代弁し、真の信仰者と偽善者とを識別する人物なのです。

終末におけるメシアに関する3つの見解はすべて、同じ部分を共有します。次の四記事ではムスリムの未来観を紹介します。この見解は非常に明快であり、ユダヤ教やキリスト教とは違い、教義上の相違の余地は非常に少ないものです。真実を見極めて受け入れ、虚偽を拒否するかどうかは、あなた自身に委ねられているのです。



Footnotes:

1 お互いの虐殺と破壊。

2 これら四つの見解はキリスト教の諸宗派の大半で見出すことができます。しかし大まかには、前千年王国説に関してはカトリック・ディスペンセーション主義VS.プロテスタント・歴史主義、また黙示録預言既成説に関してはカトリック・後千年王国説VS.プロテスタント・無千年王国説に分割出来ます。

3 四つの図は(http://www.blueletterbible.org/faq)からのものです。

4 偽預言者は、サタンが取り憑いた、または影響された反キリストと混同されがちですが、必ずしもそうとは言えないようです。他の解釈では彼を独立した存在であるとし、取り憑かれたのでも、復活されられたのでもなく、反キリストでもないとします。

5 双方のケースにおいても、「邪悪な諸国家」がゴグとマゴグであるかどうかに関わらず、それらがいかに千年王国を生き延びるのかについては明確ではありません。

6 THE PAROUSIA: A Careful Look At The New Testament Doctrine Of The Lord’s Second Coming , by James Stuart Russell, (1878)

7  See: AMILLENNIALISM, or The truth of the Return of the Lord Jesus, by Rev. D. H. Kuiper

8 これは、彼が神によって昇天までの間に与えられた使命のことに言及しているのではありません。イエスは死んだのではなく、その人生は終っておらず、その完遂も始まっていません。ヨハネ16:12で、イエスは(処刑の前夜祈った所とされる)ゲッセマネへ行く直前に、このことをほのめかしています。「私には言っておきたいことがまだたくさんあるが、今あなたがたには理解できない。」

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イエスの再臨(2/5)

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説明: クルアーン、預言者にまつわる伝承におけるイエスの降臨についての予言・前兆について。

  • より ジェレミー・ボルター
  • 掲載日時 19 Mar 2012
  • 編集日時 19 Mar 2012
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キリスト教徒は現在イエスが生きており、多くの宗派では彼が活動中であると信じています。また彼らは、彼がすでに復活されられており、二度と死すことはないと信じます。しかしムスリムの見解は、彼はもともと死んでおらず、依然として生きているというものです。クルアーンの中で、ユダヤ教徒がこのように主張していることが述べられています。

“わたしたちは神の使徒、マリアの子イエス・キリストを殺したぞ。”

しかし神はそれを否定し、このように節は続きます。

“だが彼らが彼(イエス)を殺したのでもなく、また彼を十字架にかけたのでもない。ただ彼らにそう見えたまでである。…いや、神は彼を、御側に召されたのである。神は偉力ならびなく英明であられる。”(クルアーン4:157−8)

この「召された」という表現は、文字通り物理的に地上から天国へと昇天したことを指します。そして彼は物理的に天使たちの翼に支えられて天国から地上に降臨するのです。キリスト教徒は彼が昇天した際の年齢を31〜33歳だったと推定しています。なぜなら共観福音書は、彼の人生の内の1年間を叙述しているとされているからです。ヨハネの福音書は、宣教から3年間の人生を伝えているとされています。その中でルカはこのように述べています。

「イエスが宣教を始められたときはおよそ三十歳であった。イエスはヨセフの子と思われていた…さて、イエスは聖霊に満ちて、ヨルダン川からお帰りになった。そして、荒れ野の中を“霊”によって引き回され…」(ルカ3:23、4:1)

ムスリム学者はそれに同意します。アル=ハサン・アル=バスリーは述べています。「イエスが昇天した際、彼は34歳だったが、サアド・ブン・ムサイイブは『彼は33歳だった』と言っている。」1

“啓典の民の中、彼の死ぬ前にしっかり彼を信じる者は一人もいなかった。審判の日において、彼は彼らにとって(不利な)証人となろう。”(クルアーン4:159)

ここで、神はイエスの昇天後、彼の死ぬ前に彼を信じる「啓典の民」について語っています。ここでは、彼はまだ死んでいないことが示唆されています。事実、彼はその使命を達成するまで、神の元で保護されているのです。神はクルアーンにおいてこのように述べています。

“神は(人間が)死ぬとその魂を召され、また死なない者も、睡眠の間(それを召し)、かれが死の宣告をなされた者の魂は、そのままに引き留め、その外のものは定められた時刻に送り返される。本当にこの中には、反省する人びとへの種々の印がある。”(クルアーン39:42)

また、このようにも述べられています。

“かれこそは、夜間あなたがたの魂を召される方で、あなたがたが昼間行ったことを知っておられる。またかれは昼間、あなたがたを目覚めさせ、定められた(あなたがたの生活の)期間を全うなされる。それからあなたがたはかれの御許に帰る。その時かれは、あなたがたに自分が行ったことを告げ知らせる。”(クルアーン6:60)

「定められた期間」とは、神にとって周知かつ確証されている私たちの人生の日数のことを指します。「召される」という言葉は、その使徒が不信仰によって脅迫を受けたときの、イエスに対する神の約束のことです。クルアーンは、神がイエスにこう告げたことを教えます。

“われはあなたを召し、われのもとにあげて、不信仰者(の虚偽)から清めるであろう。”(クルアーン3:55)

それゆえ、神がイエスを十字架刑から救ったとき、神の約束は果たされ、イエスが地上に戻ってきてその使命を全うすれば、もう一つの約束も果たされるのです。それがマリアの受胎告知における約束であったことも啓示によって確認されているのです。

“本当に神は直接ご自身の御言葉で、あなたに吉報を伝えられる。マリアの子、その名はイエス・キリスト、彼は現世でも来世でも高い栄誉を得、また(神の)側近の一人であろう。彼は揺り籠の中でも、また熟年2してからも人びとに語り、正しい者の一人である。”(クルアーン3:45−46)

30代前半は熟年層とは言わないことから、この予言は彼の再臨に際して人々に語ることを示唆しています。よって、この二番目の約束(彼が死ぬ前には、みな彼のことを信じるというもの)は、彼の再臨における第二の使命ということになります。彼が到来すると、彼の年齢は彼が去った時と同じで、彼はその後40年間を生きることになります3。預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)はこう述べています。

「私と彼(イエス)との間には預言者は現れなかったのであり、彼はやがて降臨するであろう。彼は・・・40年間に渡って世界に留まるであろう。その後彼は死に、ムスリムたちは彼のために葬儀の礼拝を捧げるであろう。」(アブー・ダーウード、アフマド)

イエスは終末の間近に再臨します。彼の降臨自体が終末が近いという大きな兆候なのです。クルアーンはこのように述べています。

“彼(イエス)は、(審判の)時の印の一つである。だからその(時)について疑ってはならない。そしてわれに従え。”(クルアーン43:61)

彼の到来後、二、三の間違いようのない兆候が続きます。獣が出現4し、地上からは信仰者が絶滅5して不信仰者のみが残り、そして西から太陽が昇る6のです。

イエスの再臨もそのうちの一つである10の大いなる兆候は、一つのハディースに要約されています7

「終末は10の兆候を見るまでは訪れない。煙、偽メシア、獣、西からの日の出、マリアの子イエスの降臨、ゴグ・マゴグ、三つの揺れ―一つは東、一つは西、そしてもう一つはアラビア半島から―、そしてその後アデン方面から炎が立ち上がり、人々を最後の会合の地へと追いやるのだ。」(アフマド)

神が我々を不信仰からお守りになり、終末の瞬間を見届ける者たちの一人とはなさいませんように。



Footnotes:

1 Ibn Kathîr: Stories of the Prophets; The Story of Jesus, Elevation or Crucifixion, p 541

2 クルアーンにおいて使用されている言葉は「熟年」や「老年」を意味するカハルです(Al-Mawrid al Waseet Concise Arabic-English Dictionary)。 またMokhtar Al Sihhah Lexicon辞書によると、35歳以上で白髪持ちのことを指します。

3 Faslu’l-Maqaal fi Raf’i Isa Hayyan wa Nuzoolihi wa ’Qatlihi’d-Dajjal, p. 20

4 クルアーン27:82において予言されています。“彼ら(不正者)に対し御言葉が実現される時、われらは大地から一獣を現わし、人間たちがわが印を信じなかったことを告げさせよう。”

5 預言者はこう言っています。「そのときになると、神は人々の腋の下を吹き抜けるような心地良い風を吹かせ、それはすべてのムスリムの生命を奪い、邪悪な者たちしか生き残らず、彼らはロバのように姦通をし、彼らに終末が訪れるのです。」(サヒーフ・ムスリム)

6 預言者はこう言っています。「最初の兆候とは西から現れる太陽と、昼前に人々の前に現れる獣であり、それらのうちの片方が先に起これば、もう片方が直ちに続くでしょう。」(サヒーフ・ムスリム)

7 この伝承における兆候の数々は、実際に起きる順番とは異なります。

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イエスの再臨(3/5)

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説明: イエス再臨の状況、それに先駆ける試練と苦難、マハディーの出現、そしてマスィーフ・ダッジャール(偽メシア)と彼を倒すイエスの役割について。

  • より ジェレミー・ボルター(ゥ 2012 IslamReligion.com)
  • 掲載日時 21 May 2012
  • 編集日時 21 May 2012
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マハディーと偽メシア

The_Return_of_Jesus_(part_3_of_5)_001.jpg再臨の際には、終末間際にマハディー1、そしてマスィーフ・ダッジャール(アラビア語で偽メシア)が現れ、二人には試練と苦難が関連付けられます。再臨におけるイエスの主要な任務とは、偽メシアから世界を守り、神の法の元に再統一をすることなのです。

偽メシアが到来する前には、指導者として全てのムスリムを統一するマハディーが現れます。この人物に関し、預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)は終末の前、彼の部族から彼の名前(ムハンマド・ブン・アブドッラー)を持つ人物がアラブを統治し、抑圧と不正の始まる前の7年間に渡り地球を公正さと平和でもって満たすと述べています2。さらに彼は、マハディーがムスリム国家によって支持されるとも述べています。

「私の集団の人々は真実のために戦い続けることを止めず、復活の日まで優勢であり続けるだろう。そしてマリアの子イエスが降臨し、彼ら(ムスリム)の指導者はこう言うだろう。『おいでください。そして我々の礼拝を先導してください。』」(サヒーフ・ムスリム)

それゆえ、イエスの再臨前にムスリム国家は預言者の子孫である人物の元に宗教を防衛し、彼はイエスの降臨によって中断された礼拝の先導を要請します。彼がムスリム国家を率いる期間については7年以内とされますが、的確にはどれほどの長さなのかは分かっていません。明らかなのは、マッカを攻撃しようとする軍勢が地中に飲み込まれたあと、彼はしぶしぶ、群がる人々の指揮官になるということです。

預言者は述べています。

“カリフの死後、不和が発生し、マディーナの民の一人がマッカへと避難するであろう。マッカの民の何人かは彼の元に来て、角3とマカーム4の間で、彼の意思に反して彼を擁立し、彼に忠誠を誓うであろう。すると彼に対する遠征軍がシリアから派遣されるが、それはマッカとマディーナの間の砂漠に飲み込まれるであろう。人々がそれを目撃すると、シリアの最も敬虔な人々、そしてイラクの最良の人々は彼のもとを訪れ、角とマカームの間で彼に忠誠を誓うのである。”(アブー・ダーウード)

「また、いくつかの軍事行動があるが、そのうちの最たるものは内在分子5に対するものであり、次に外在分子に対するものがある。世界中のムスリムの最強の兵士によって構成された軍隊がマディーナから進軍し、アッ=シャーム6の西側諸勢力からの侵攻に対抗するであろう。」

「彼らが配列すると、ローマ人たちはこう言います。『我々と、我々の中から捕虜を取った者たちの間に立ち入ってはならない。共に彼らと戦おう。』するとムスリムたちは言います。『いえ、神にかけて、我々は決してあなたがたの側にも、または我々の同胞の側にも立ちません。あなたがたが彼らと戦うことの出来るように。』」(サヒーフ・ムスリム)

The_Return_of_Jesus_(part_3_of_5)_002.jpg戦闘は3日間、すべての軍勢に多大な犠牲が出るまで続き、4日目にムスリム軍の残りの勢力が西側諸勢力を打倒し、イスタンブ−ルを征服します。兵士たちが戦利品を収集しているときに、偽メシアが到来し彼らの元に現れるという嘘の噂が広まるため、彼らはシリアに向かいます。彼らがダマスカスに到着すると、マハディーは偽メシアの到来に備えた戦争の支度をし、偽メシアは実際に姿を現すのです。

彼は40日間に渡って地上に留まります。しかし、この40日間は特別なものです。その初日の昼夜は丸一年間続き、二日目は丸一ヶ月間、三日目は丸一週間、そして残りの37日間は通常通りの日々です7。この最後の37日間において、恐らくイエスは現れるでしょう。なぜなら、彼は降臨した直後に偽メシアを殺すからです。

偽メシアは東から現れ、それはシリアとイラクの中間地帯8であり、彼の出現は多岐に渡る様々な問題と不正を引き起こします。彼は風に流れる雲のように多方面へと移動することができ、ある人々の前に現れたかと思うと、たちまちその他の人々の前にも現れるのです。彼は自分に従うよう人々を招き、その招きに応じて彼への信仰を確証する者へは空から雨を降らせて報酬を与え、それは農産物や家畜への恵みとなり、彼らは繁栄します。彼の招きを拒否する者は干ばつ、飢饉、そして富の損失によって損害を被ります。彼はどこへ行こうと、その地の財宝に呼びかけ、それらは蜜蜂の群れように彼の元へと集まってきます。また彼はある男を真っ二つにして殺しますが、彼をたちまち生き返らせることが出来るのです。

イエスの降臨と偽メシアの死

ここから見て取れるように、偽メシアには人々を確信させ、道を踏み外させる様々な奇跡が与えられており、大勢が彼に従います。複数のハディースには多くの人々、特にユダヤ教徒たちが自らを神の代理人と主張する彼を本物のメシアと信じることが言及されています9。しかし彼はすぐに自らが神の力であると主張し出し、やがて神自身であると主張します10。彼は世界中の大部分を支配し、マハディーと対峙するためにダマスカスへ向かいますが、その時に真のメシアであるイエスが降臨するのです。

「神がマリアの息子キリストを遣わすとき、彼はダマスカスの東側にある白いミナレットのもとに、サフランで軽く染色された二着の衣服をまとい、両手を二人の天使の翼に添えて降臨するだろう。彼が頭を垂れると、汗の雫がこぼれ落ち、彼が頭を上げると真珠のような雫が散らばる。彼の匂いを嗅いだ不信仰者はすべて死に、彼の息は彼が見渡すことの出来るところまで届くのだ。」(サヒーフ・ムスリム)

別のハディースにはこうあります。

「礼拝の時刻になると、マリアの子イエスは降臨し、彼らの礼拝を先導するだろう。神の敵は彼を目にすると、あたかも塩が水に浸かったかのように、溶け始めるであろう。」(サヒーフ・ムスリム)

前者のハディースは、その続きでリッダで彼らが対峙することに言及します。

「彼(イエス)は偽メシアを追いかけて、リッダの門で彼を捕らえ、殺すであろう。」(サヒーフ・ムスリム)

イエスは神によってもたらされた槍を用いて彼を殺し11、誘惑の影響力は消え去ります。

「そして、神によって保護されていた人々はマリアの子イエスの元を訪れ、彼は彼らの顔を拭い、彼らの楽園における階級を告げ知らせるのだ。」(サヒーフ・ムスリム)

これは審判の日の審判に関する知らせではありませんが、神によってイエスに与えられた知識です。これらの人々は、キリスト教の「携挙」における選民たちではなく、彼の再臨を取り巻く動乱の時代を生き抜いた人々です。そしてこれはメシア再臨に関わる第一幕に過ぎず、次の部でさらに詳しく述べられます。



Footnotes:

1 アル=マハディーは、逐語的に「道を開く者」を意味しますが、名称としては「神によって真実に導かれた者」を意味します。

2 スナン・アブー・ダーウード

3 カアバ聖殿の扉に最も近い角。この角には黒石が埋めこまれています。

4 マカーム・イブラーヒーム(アブラハムの立ち所)とは、彼がカアバ聖殿を建築する際に立っていたとされる石です。

5 「カルブ遠征」は、スナン・アブー・ダーウードにおいて、ウンム・サラマによって言及されています。

6 アッ=シャームとはシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、そしてイラクの一部を有する地域の総称です。

7 サヒーフ・ムスリム

8 ムスナド・アフマドにおいて、「ホラスターン」または「アスバハーンのヤハワディーア」として、その的確な場所が報告されています。後者はシャハリスターンと関連付けられます。

9 アナス・ブン・マーリクは、神の使徒が次のように言ったことを述べています。「偽メシアは、アスバハーンの7万人のユダヤ教徒たちによって従われるであろう。」(サヒーフ・ムスリム)

10 サヒーフ・ブハーリー。これに関する根拠は間接的なものです。ハディースでは、偽メシアの追従者たちが、彼を否定する男にこう問いただします。「お前は我々の主を信じないというのか?」その後彼を殺して生き返らせた偽メシアはこう問います。「さあ、これでお前は私の言う事を信じるのか?」同じ典拠による、別の二つのハディースでは、預言者(神の慈悲と祝福あれ)はこう述べています。「実に、神の片方の目は盲目ではないのだ。だが、偽メシアの右目は盲目で、その目は浮き上がった葡萄のようである。」また、このようにも述べています。「嘘つきの片目の男(偽メシア)について、民を警告しなかった預言者はいない。彼は本当に片目であり、そして本当に、偉力ならびなく高貴であられるあなたがたの主は片目ではないのだ。」ここで示唆されているのは、たとえ彼がどんなことを主張しようとも、私たちは偽メシアと主とを混同すべきではないということです。

11 サヒーフ・ムスリム

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イエスの再臨(4/5)

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説明: 偽メシア後について。啓典の民の誤った宗教の廃止、イエスの元における神の国の樹立、そしてゴグ・マゴグの侵攻。

  • より ジェレミー・ボルター
  • 掲載日時 28 May 2012
  • 編集日時 28 May 2012
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イエスの元に樹立する神の国

The_Return_of_Jesus_(part_4_of_5)_001.jpg偽メシアの殺害は、彼に追従していたキリスト教徒・ユダヤ教徒たちに大きなショックを与えます。彼らは騙されていたことに、ようやく気付くからです。実際、彼を殺したイエスの役割により、生き残ったキリスト教徒たちの大半は、偽メシアが彼ら自身の啓典において予言されていた反キリストだったことを確信するようになります。預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)はこう述べています。

「やがてマリアの子はあなたがたの間に降臨し、(神の法に基づいた1)公正な裁きを下すであろう。彼は十字架を破壊し、豚を殺す…」(サヒーフ・ブハーリー)

十字架の破壊は比喩的あるいは逐語的なものです。つまり教会の偶像および尖塔の十字架の取り壊しや、宗教的シンボルとして十字架のネックレスをすることの禁止、またはユダヤ教徒の扇動によって彼がローマ人によって処刑されたという作り話の否定を意味していると考えられます。同じように、豚を殺すことも比喩的または逐語的なものです。それは豚肉の消費を不可能にさせる、すべての豚の殺処分を許すもの、または単に遠い昔から定められていたように2、神による禁忌の法律を再度施行することを意味するでしょう。

「…そしてジズヤが撤廃されるであろう。」(サヒーフ・ブハーリー)

また、ユダヤ教徒たちの生命が大量に失われた後の彼らの指導者の死は、それが彼らにとっての虚偽の希望であったことを証明します。恐らく偽メシアによる自身の神性の主張は、既に彼らの心中に疑念を生じさせていたのでしょう。彼らが神の導きに立ち返り、ラビに従わないようになることにより、非ムスリムが神の意志に服従せずに済む手段であるジズヤ3の支払いは、イエスによって廃止されることが宣言されます4。ジズヤの支払いが認められないようになることは、ただ一つの宗教以外はすべて根絶されることが明示されています。啓典の民は、イエスが施行するイスラーム法に従うことが求められ、それを拒否する頑迷な者たちは、彼らの廃れた過去の宗教を保持し続けることが許されず、追跡されて処刑されるでしょう。

「終末はムスリムたちがユダヤ教徒たちと戦い、彼らを殺すまでは訪れない。ユダヤ教徒たちは石や木の陰に避難するが、石や木はこう言い出すだろう。『神の僕よ、ここには(頑迷な)ユダヤ教徒がいるぞ。ここに来て彼を仕留めるのだ!』しかしガルカドの木は部分的なユダヤ教徒であるため、それらは口を聞かないだろう。」(サヒーフ・ムスリム)

この段階においては、ムスリムでも啓典の民でもない人々の運命については言及されていませんが、彼らの一部もイエスの統治に入るか、死ぬことになるでしょう。その他の者たちは恐らく、ゴグ・マゴグとされる民によって破滅がもたらされるでしょう。

ゴグとマゴグ5の侵攻

ゴグとマゴグが正確には誰を指すのかは知られていませんが、真正伝承集であるハディース(サヒーフ・ブハーリーとサヒーフ・ムスリム)では、人間の諸国家6のことであるとしています。彼らに関してクルアーンは述べます。

“彼が2つの山の間に来た時、彼はその麓にほとんど言葉を解しない一種族を見付けた。彼らは言った。「ズル=カルナインよ、ヤアジュージュとマアジュージュが、この国で悪を働いています。それで私たちは税を納めますから、防壁を築いて下さいませんか。」”(クルアーン18:93−94)

ズル=カルナインが彼らの要望を(報酬を求めることなく)承諾すると、彼は彼らにこう言います。

“「これは、私の主からの御慈悲である。しかし主の約束がやって来る時、かれはそれを粉々にされよう。私の主の御約束は真実である。」その日われは、人を御互いに押し寄せる波のようにまかせよう。”(クルアーン18:98−99)

これは、イエスは元ユダヤ教徒とキリスト教徒からの忠誠の誓いを受けるものの、彼ら(ゴグ・マゴグ)はその統治下にはない人々であることを示しています。そしてゴグとマゴグこそが、イエスがもたらす平和的な統治の前に襲来する、信仰者たちにとっての最後の脅威となるのです。クルアーンはこう述べています。

“ヤアジュージュとマアジュージュが解放されて、どの丘からも勢いよく下って来る時までは。真実の約束は近付いているのである。見なさい。信仰しない者の目は坐ってきて(言うであろう)。「ああ、情けない。私たちはこのことを疎かにしていました。いや、私たちは不義な者でした。」”(クルアーン21:96−97)

イエスですらゴグとマゴグの襲来には抵抗することが出来ません。まるでイナゴの大群のように、彼らが通過した場所は壊滅的な被害が与えられます。

アブー・サイード・アル=フドリーは、預言者の言葉として、牛や羊を連れたムスリムたちのみが都市や要塞に避難し、猛襲を耐えぬくことが出来るということを伝えています7。そのハディースは以下のものです。

神はマリアの子イエスに啓示を下すであろう。「われは、われの創造の誰一人として戦うことの出来ない人々をもたらそう。トゥール山にわれの崇拝者たちを連れて行くのだ。”(サヒーフ・ムスリム)

The_Return_of_Jesus_(part_4_of_5)_002.jpgゴグとマゴグはそのあまりに巨大な軍勢から、彼らの軍隊の前列が湖から水を飲み、後列がそこを通過する頃になると、こう言って嘆き悲しむ程です。「ここにはかつて水があったのだ。」彼らの要塞と避難地に入ったムスリム以外は皆殺しにされ、このような宣言がされます。「我々は地球の人々を征服した。天国の人々(の打倒)が残るのみである。」そして彼らは天に向けて弓矢を放つと、それらは血まみれになって地上に落ちてくるのです8

ゴグとマゴグは勝利を勝ちとったと勘違いしますが、彼らの傲慢さは凋落につながります。彼らの武器の血は、神からの試練だったのです。次の部では、いかにゴグとマゴグが倒され、その後は何が起こるのかについて述べられます。



Footnotes:

1 クルアーンとムハンマドの慣行に基づいた法であるシャリーアによって、イエスは公正さと正義に満ちた統治をするのです。

2 そのことはトーラーとクルアーンの双方において記録されています。

3 ジズヤとは、啓典の民から徴収される人頭税であり、彼らはそれを収める代わりにイスラーム国家の一員として保護され、信教の自由が認められるものです。

4 神は「アル=フルカーン」という言葉を用いてムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)に啓示されたもの、そしてモーゼとアロン、またその他の預言者たちに啓示されたものに一括して言及しています。律法学者による加筆や解釈によって改ざんされなかった元来の教えの多くは、神の法の最終的な形態である最後の預言者によって制定された法に先行・調和するものです。

5 ゴグとマゴグは、アラビア語ではそれぞれヤアジュージュ・マアジュージュと呼ばれます。

6 預言者は述べています。「あなたがたの中からは二つの国家が現れ、近づく者すべてをその群衆の数によって圧倒するのだ。ヤアジュージュとマアジュージュである。」

7 ムスナド・アフマド

8 ムスナド・アフマド

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イエスの再臨(5/5)

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説明: ゴグとマゴグの最後、その後に訪れる平和と豊潤、戦争のない世界、神の真実の宗教の普遍化、そしてイエスの死について。

  • より ジェレミー・ボルター
  • 掲載日時 28 May 2012
  • 編集日時 28 May 2012
  • プリント数: 193
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ゴグとマゴグの最後

ゴグとマゴグが遂にムスリムたちを要塞や避難地に追い詰め、空から落ちてきた彼らの矢が血まみれになっているのを見ると、彼らはムスリムたちに対する勝利を確信します。しかし、その夜になると、次の事件が起きるのです。

「イエスと教友たちは神の助けを求め、神は彼ら(ゴグとマゴグ)に対して、彼らの首元を攻撃する蠕虫を遣わす。そして翌朝、彼らは全滅するのである。」(サヒーフ・ムスリム)

大群が全滅したことを知らないムスリムたちは、要塞の中から外にいる敵の様子を伺うための偵察隊の志願者を呼びかけます。死を覚悟した志願者たちは、敵が全滅しているのを発見すると、このように呼びかけます。「ムスリムたちよ!喜ぶのだ!神は我々に勝利を授けてくださったぞ!」1

イエスとトゥール山に避難をした人々が山を降りると、彼らも同様の光景を目にしますが、彼らの周囲の土地は、見渡す限りの密集した腐乱死体と、その強烈な死臭が漂っています。それは非常に不快かつ健康への悪影響もあることから、イエスは再び神に祈り、神は巨大な鳥を遣わしそれらの死体を運び去り2、太陽の昇る方角の海に投げ込みます。

その後

その後、神は40日間に渡って、すべてに降り注ぐ豪雨を降らせます。洪水とは異なり、その降雨は有益なものとなります。

「地上は鏡のようになるまで洗い流されます。それから神は地球に命じます。『果実を実らせ、祝福を回復せよ。』」(サヒーフ・ムスリム)

ムスリムは再び家畜を放牧させ、そこにある牧草は過去のどんな牧草よりも家畜をよく肥えさせます4。果樹園からはかつて見たこともないような大きさと質の果物が採れるようになり、乳牛からは豊富な良質の乳が出て、誰一人その欠乏をみることはありません5

ゴグとマゴグの襲来の益とは、不信仰者の根絶による信仰者国家の樹立、そして彼らの襲来と全滅による死骸を肥料とし、そこは豊潤な土地となることです。富は有り余るようになり、人々は喜捨の対象を見つけることが出来なくなる程です6。アブー・フライラは、預言者(神の慈悲と祝福あれ)がこのように述べたことを報告しています。

「…そしてジズヤはなくなるであろう。金銭は誰一人としてそれを(喜捨として)受け取らない程に豊富となるであろう。」(サヒーフ・ブハーリー)

損害となるのは男性人口の減少であり、それは男女比に不均衡をもたらします。おそらくその原因は戦死者から来るもので、第二次世界大戦後でも見られたように、女性人口は男性のそれをはるかに上回ることになります7

イエスの統治と彼の死

イエス(神の平安あれ)による統治は、ムハンマドのもたらした法に基づいたものとなります。このことは、神がすべての預言者たちに誓約させたことと一致します。クルアーンにおいてこのように述べられています。

“神が預言者たちと約束された時を思え。(かれは仰せられた)。「われは啓典と英知とをあなたがたに授ける。その後で、あなたがたが持つ(啓典)を実証するため、一人の使徒があなたがたのところに来るであろう。(その時)あなたがたは彼を信じ、彼を助けなさい。」かれは仰せられた。「あなたがたはこれを承知するか。このことについて、われと固い約束をするか」彼らは申し上げた、「承知しました」「それならあなたがたは証言しなさい。われもあなたがたと共に立証しよう。」と仰せられた。”(クルアーン3:81)

したがってイエスの統治は神との約束に準じたものとなり、これはアブー・フライラによって報告された預言者による説明によって裏付けられています。預言者はこう述べています。

神の使徒は言った。「マリアの子があなたがたの間に降臨し、あなたがたを先導するとき、どうするというのか?」

教友の一人、イブン・アブー・スィーブは尋ねました。

彼が「あなたがたを先導する」とはどういう意味でしょうか?

アブー・フライラは答えています。

「彼はあなたの主―かれは至高にして称賛される御方―の書と、あなたの使徒の慣習に基いた先導をするのです。」8

彼の統治によって人々の間にはお互いへの敬意と平和、そして繁栄がもたらされます。別のハディースでアブー・フライラはこのように述べています。

「遺恨、お互いへの敵意、嫉妬は消え失せ、彼(イエス)が人々を集めて富を分配しようとしても、誰も受け取ろうとしないでしょう。」(サヒーフ・ブハーリー)

少なくとも7年間続く人々の間の憎しみの消失は、相対的なものではなく、絶対的なものです。その間、人々はお互いに怒ることもなくなり9、彼らの間では「平和」の挨拶が交わされます。事実、信心深さと敬虔さは各人にとって必要なこととなるのです。

「(礼拝における)神への一回の跪礼は、世界とその中にあるすべてのものに勝るのである。」(サヒーフ・ブハーリー)

イエス自身はイスラームのシャリーアのみを用いて統治するだけでなく、彼はすべてのイスラームの柱を完遂させます。預言者ムハンマドは述べています。

「私の魂がその御手に委ねられている御方に誓って。マリアの子はハッジかウムラ10、または双方において、ラウハの谷(マディーナ近郊の谷)で神の御名を唱えるであろう。」(サヒーフ・ムスリム)

そして彼の再臨から40年が過ぎると彼は死に、ムスリムは彼の葬儀の礼拝を捧げます11。そしてこの瞬間こそは、神がクルアーンにおいて言及されている箇所なのです。

“啓典の民の中、彼の死ぬ前にしっかり彼を信じる者は一人もいなかった。”(クルアーン4:159)

神の御意であれば、すべての人々は唯一の啓典を信じるようになることでしょう。

結論

以上から分かるように、イエスの再臨は非常に壮大な出来事となり、実に特別な事件が次々と起こるため、それらをおとぎ話のように感じる方もいるかもしれません。イエスは世界中が神の助けを必要とする時代にやって来ます。この助けはイエスと共にもたらされますが、その時代における試練はあまりにも大きすぎるために彼自身でさえ直面することが出来ず、追従者たちと山の山頂へと避難しなければなない程です。そのとき、ただ神のみが人類を救うことになるのです。神によるこの助けは、人類にとっての最大の試練に終止符を打つためにもたらされるだけでなく、神の真実を明白にさせ、偽メシア、ゴグ・マゴグなどといったすべての虚偽の幕を閉じ、人は皆、真の神の宗教のもとに一致団結することになるのです。



Footnotes:

1 ムスナド・アフマド

2 サヒーフ・ムスリム

4 ムスナド・アフマド

5 サヒーフ・ムスリム

6 同上

7 男性人口の減少は非常に深刻だったことから、1948年にミュンヘンで開かれた国際青少年会議では、女性人口の過剰分を補うため、一夫多妻制の採用がその対策として提唱されたほどです。

8 サヒーフ・ムスリム

9 サヒーフ・ムスリム

10 これらはマッカの聖殿で行う大小の巡礼の名称であり、前者はイスラームの柱の一つとして義務とされる儀礼です。

11 アブー・フライラは預言者(神の慈悲と祝福あれ)が次のように述べたことを伝えています。「彼(イエス)は地上で40年間生き、それから死ぬであろう。ムスリムたちは彼の葬儀の礼拝をするであろう。」(ムスナド・アフマド、アブー・ダーウード)

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